灰色の日々(1)没入

灰色の日々(1)没入

 暑い日がなかなか終わらない初秋の朝だった。
 目覚めると、彼女の背後に身体をずらして回り込んだ。上を向いて寝ていた彼女は気配を察すると、横に向いて自分に尻を向けた。
(痴漢プレイが好きな自分に合わせてくれる健気さが、本当に可愛らしいな)
 柔らかな尻に、朝起ちの息子を押し付けた。腰を前後に滑らせて、硬くなりつつある息子を押し込んで、彼女の股間を刺激した。
 両手を前に回して、柔らかな乳房を撫で回して揉み、徐々に手を降ろした。彼女の股間は既にたっぷりと湿っていた。
 彼女のパンティーを尻の半ばまで降ろし、素の股間に硬くなった陰茎を入れようとして、異変に気付いた……。
(あれ? どうしたんだろう? 暑さのせいだろうか?)
 フル勃起しているはずの陰茎は半立ちのままで、亀頭は煮込まれたしいたけのように柔らかなままだった。
 夏の真っ盛りは夏バテに負け、性欲が落ちることはよくある。しかし季節は秋に入って体調は良くなり、これからセックスを楽しめる季節になっていた。
(なんか、大きな悩みとかあったかな?)
 あれこれ考えて見るが、勃起しなくなるほどの大きな苦悩は思いつかない。
 つい先日までは、十日間も放出しないで溜めていたら、暴発するほどに元気だった。
 玉袋には、ザーメンが二週間分は溜っている様で、揺すると重ささえ感じた。
(異変を悟られる前に逝かせるか!)
 シックスナインになり、舌で彼女の肉びらを舐めた。最近自ら陰毛を剃るようになった彼女の陰部は、美しく濡れて息づいていた。肉羽の間に舌を挿し込んで、あふれる蜜を啜りなら、クリトリスで逝かせた。
 ビクビクと身体を震わせながら、彼女は声を上げた。
「ああっ! 気持ち良い! お願い! 入れて!」
 彼女の身体はまだ開発中で、クリトリスでしか逝けないが、逝かせた後に挿入されるのは最高に気持ちが良いらしかった。
 逝ったばかりの彼女のあそこはすこぶる締まって、気を抜くとすぐに逝かされてしまうほどだ。
 彼女の柔らかな舌でねちっこく舐められて、まあまあの硬さを保った陰茎を、逝ったばかりの彼女の肉羽の間に、ぐいっと挿入した。これで安心かと、腰をフリフリと動かした。いつもなら、頭の中は快感物質で満たされて、全身に蕩けるような快感が巡り、心臓はバクバクとして最高に盛り上がるはずだった。
 だがその数分後、ドキドキはスーッと引いて、酔いから覚めたような感覚に落ちていった。
 不安は現実となりつつあった。それでも気合を入れて腰を振ったが、愚息はへなり、ミミズの様になって、ぬらりと抜けた……。
(駄目だ……。おれ、完全にEDじゃん……)
 その後、懸命な彼女の口での愛撫を受けて、少しは回復するも、上に乗った彼女を喜ばせる事は出来なかった。
 どんなにしようが、あの湧き上がるようなセックスの興奮と快感を、体は忘れてしまったように、反応を消した。
(こんな事ではいかん! 気分を変えるか)
 彼女と旅行に行き、大枚をはたいて、露天風呂付きの宿に泊まった。
 いつもなら、風呂で即後ろからはめるのだが、結局、旅行中、陰茎が立ち上がる事は無かった。

 十年ほど前に一度、EDになった事があった。
 それ系の風俗で、二十も歳下の看板嬢を引き当てた。若々しい肉体に抱きつくと貪るように口を吸った。だか、焦りすぎたのか、直ぐに強い射精感を感じた。それを、ぐいっと無理やり我慢したのが悪かったのか、フニャちんとなり、最後まで復活することは無かった。
 それがトラウマとなり、体調が良い普通の時でさえも、「またフニャっとしてしまうのでは?」という不安に襲われて、何度もフニャるようになった。
 だが、その時はED薬に辿り着き、お守り代わりに持つことで、なんとか薬要らずの身体に復活した。
 今回はその時より、明らかに重症に感じた。勃起さえも全くしないので、ED薬以前の問題だろう。
(最近トレーニングをしてないしな! まずは勃起させよう!)
 身体に快感を思い出させる為に、お気に入りのAVを見ながら、手でするが、やはり、ドキドキする前に気分がスーッと引いてしまう。気持ち良いのは本当に最初だけで、盛り上がることが出来ないのだ。1時間粘って気力を振り絞って無理やり射精するも、快感より喪失感が残り、余計に自信を失ってしまった。
 彼女も気にしている様で、ラインのやり取りの裏に、冷たいすき間風が吹き抜けるのを感じた。 
(オレは、エロに興味を失ってしまったのか?……)
 エロ小説を書く気分にもなれなくなった。
 いつもなら、自分の書いた文章でカチカチに勃起させ、下半身に湧き上がった快感を膨らませる為に、更に妄想を高めて、高揚とした快感に包まれながら、淫らな文章を書き連ねていた。
 それが、何を見ても、身体に快感が湧かなくなってしまった。
 AVは見なくなり、オナニーからも遠ざかり、まるで仙人にでもなったような気分だった。
 何とか続けていた小説は、完全に放置された。
 どんなに書こうと思っても、脳内にエロい事が浮かばなくなっていた。
 一時はオナニーを止められずに、低温火傷をする程にシゴキ続けた息子にも触れることは無くなった。
 玉袋重くなっても、息子は沈黙していた。
 仕事をしていても、飲んでいても、カラオケでも盛りあがらず、楽しい気分になれない。とはいえ、落ち込んだ気分にもなら無い。
 普通が続き、他人の生活を見ているような感じで、周りがすべて灰色一色になったような気がした。

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