切なくとも満ち足りた夜

切なくとも満ち足りた夜

何度も歩いた道を夏の夜風を感じながら、二人並んで歩いた。
「好きな人が出来たんです。だからもう会えないかもしれません」
「そうなんだ。それは良かった」
約一年、週に一回は食事をして、彼女を家の前まで送った。毎日のようにメールを交換した。

(何時か別れるって分かってるんだから仕方ないよな)
そう自分に言い聞かせるが、心の中では簡単に認められなかった。いつもなら聞きわけの良い大人を演じるが、今日はそんな気にならなかった。
「ずるいよ、急に……」
「だって……」

あと数百メートルで彼女の家の前だ。いつも別れるコンビニの灯りが見えた。
「ねぇ、一度だけ。もう最後だからって分かってるから、一度だけ抱かせてくれない?」
酔っていたとはいえ、そんな言葉が自分の口から出てびっくりしていた。彼女は黙っていた。
もう一度、僕は同じ言葉を繰り返した。

「一度だけですよ」
彼女はポツリと言った。
動悸を押さえながら、コンビニで「少し時間を下さい」っと言った彼女の連絡を待った。

初めて彼女の家に上がった。ドアを開ければすぐ部屋が見渡せてしまうワンルームだった。レースのカーテンから洩れる月明かりの下で、何も言わずに抱き締め、ベットに座らせると唇を合わせた。

狂おしいほど欲していながら、決して手には入らないと思っていた唇だった。求めてはいけないと自分を押さえていた。求めても、彼女を幸せにい出来ないことは明白だったからだ。

柔らかい舌を吸い出して絡めた。
「愛してる」
本気の言葉だった。でも、決して言ってはいけないと思っていた。口に出したら、終わってしまうと思っていた。

オレンジのワンピースの背中のファスナーを降ろすと、白い下着と黒いストッキングが、美しく浮かび上がった。
ブラを外し、可愛い乳首に舌を這わせた。愛おしい肌が目の前にあった。こんなにも狂おしいほど求めていたことに、今やっと気がついた。

「あん、ああん」
優しく舌を這わせていると、甘い喘ぎ声が漏れた。ストッキングを脱がせると自分も脱いだ。
パンティーの上から顔をうずめた。汗の匂いがした。
「ああっ、シャワーしたい」
「ダメ」
パンティーを脱がせると股間に舌を這わせた。彼女の素の匂いがした。
ゆっくりと足の先から這い上がりながら舐めた。肉棒ははちきれんばかりとなり、彼女の素肌に触れるたびに、先から我慢汁が漏れ、肌を濡らした。

入れなくても狂おしいほどの快感と充足感が満たしていた。愛しい人を抱く喜びを久しぶりに感じていた。
「入れるよ」
「ダメ、お願い。それだけは」
先端を泉に付けると、僕は腰を進めた。狭い彼女の膣穴は、完全に膨らんだ先端の進入を拒んだ。ゆっくりと腰を前後させて沈めた。恐ろしいほど力強い締め付けが、快感を増幅させた。

「ああっ、ううっ、大きいっ、ああん」
数分を掛けてやっと根元まで沈みこめた。彼女は少し辛そうだったが、小刻みに腰を震わせていると、徐々に可愛い声を上げ始めた。
愛おしい唇を吸い、乳房を舐め、腰を動かす。力強く抱きしめたまま腰を使った。
激しい快感が、僕と彼女を狂わせた。

「好きだよ。愛してる」
最後のはずなのに、何故そんな言葉が出るのか自分でもよくわからない。
スリムで若々しい体に、僕は溺れた。動く度に激しい締めつけが肉棒を締めつける。それを押しのけながら僕は突き入れた。

ベットがギシギシと音を立て、狭いワンルームに妖しい声が響いた。
「ああっ、ダメだ」
僕は呻くと、彼女の中に自分の証しを打ちこんだ。
「ああっ、ううっ」
彼女は全身を硬直させてそれを受けた。僕は口を押し付けて彼女の声を飲み込みながら腰を前後に振った。

カーテンの間から洩れる月の光に美しい顔が浮かんでいた。その下には柔らかな曲線を描いて、乳房と小さな乳首が青白く光って見えた。
その横顔に唇を押し付けた。
「愛してる」
彼女の瞳からきらりと滴が落ちた。

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